坐漁荘。昭和の元勲、西園寺公望の別邸

座漁荘。明治から昭和の元老、西園寺公望の別邸

マグロの陸揚げ量日本1位を誇る静岡県静岡市清水区。サッカーチームである清水エスパルスがあるこの都市には、清水港周辺にさまざまな観光スポットが登場します。

マグロを中心としたさまざまなお寿司が楽しめる清水魚市場や、博徒の親分として幕末から明治初期まで活躍した清水次郎長など、食と歴史が集まるエリアでもあるのです。

そんな清水市の興津町に、隠れた名スポットが存在します。それが本日ご紹介する座漁荘です。坐魚荘は、明治時代から大正、昭和にかけて活躍した政治家、西園寺公望の別邸として建てられたスポットです。西園寺公望は、また関西の有名私立大学である立命館大学の創設者としてもしられる人物です。

この座魚荘は西園寺公望が政治家として第一線を引いた跡に住んでいた別邸として知られており、木造瓦葺の純和風の建物で、こののんびりとした興津町に建てられています。

この座魚荘の名前の由来は、のんびりと座って魚をとって過ごすという意味が込められていますが、実際に2度も内閣総理大臣を務めた西園寺公望のもとには、多数の政治家が訪れ、のんびり過ごすという状態ではなかったようです。

この座魚荘は、老朽化のため、一時博物館明治村への移築が決まりましたが、その後新たに保存作業が進められ、数寄屋造住宅の貴重な現存建物として重要文化財にも登録されるほどです。本日はこの西園寺公望が愛した座魚荘をご紹介します。

坐漁荘

西園寺公望とは

西園寺公望は、もともと江戸時代には公家として幕末の動乱の時期に登場しますが、大政奉還で新政府が樹立した後は軍人として幕府側と戦い、新政府軍の総督として戊辰戦争を転戦しました。

公家と聞くと一般的に武家とは違い、戦いとは無縁のような存在に聞こえますが、この西園寺公望は会津戦争においては、自から最前線に立って指揮したというほどの人物です。

西園寺公望は当時新政府軍の総指揮官として近代陸軍制度を築いた大村益次郎に目をかけられていたほどで、大村益次郎のすすめでフランスにも留学をしたと言われています。ちなみに大村益次郎は戊辰戦争が終わってほどなく暗殺されてしまいますが、暗殺される日に西園寺公望を招待していました。

しかし若い西園寺公望は、大村益次郎の家で豆腐を食うのではなく、同僚の公家と出かけたことからこの難を免れました。その後、フランスのソルボンヌ大学に留学し、帰国後は新聞社の社長になりました。

伊藤博文が国会開設の準備を行うにあたりその動きに参画し、第二次伊藤内閣で文部大臣を務め、日本の近代化を進めるべく政治家として成長しました。西園寺公望は更に第十二代と第十四代の内閣総理大臣を努め、大正時代と昭和では、明治からの最後の元老として日本の政治に関わったのです。

そして1940年、90歳で亡くなるまで長命し、政治から教育の分野まで活動を続けていました。本日紹介する坐漁荘は、そんな西園寺公望が70歳の時、1920年にたてた別邸です。この座魚荘で90歳までの20年間を過ごしました。

坐漁荘

坐魚荘の見所

座魚荘は、日本では数少ない数寄屋造の住宅です。現存物が非常に希少なことから復元され、重要文化財にも登録されました。その建設費用は西園寺公望の実弟でもあり、住友家の15代当主となっていた住友友純が負担しました。ここではその見所をご紹介しましょう。

坐漁荘

重要文化財の数寄屋造りの住宅

座魚荘は数寄屋造りの木造住宅としてその希少な姿を目の当たりにできます。入り口から他とは違う雰囲気が漂います。入り口は竹で編まれた扉で、小料理屋や料亭のような雰囲気があり、実際小料理屋にも間違われたこともあるとか。

また、一階には八畳の部屋が二つあり、二階は客間として使用されていました。西園寺公望は一階に住んでおり簡素ながら美しい眺めの庭園なども設けられています。現在の興津では見ることができませんが、西園寺公望がこの座魚荘に住んでいた時代には、二階の部屋から右手に清水港と久能山、左手には伊豆半島が遠望できたと言われています。

ちなみに、この清水区は眺めのいい場所として古来から知られており、三保の松原が世界遺産に登録されたのも富士山の眺めの一つという形で登録されました。また久能山は久能山東照宮で知られる徳川家ゆかりの場所で、こちらも景観スポットの一つです。

西園寺公望はこの座魚荘から毎日美しい清水区の眺めを堪能していたことでしょう。この座魚荘は、建物自体は簡素な作りですが、実は使用されている木材が上質なものが使用されており、外壁には檜の皮が使用されていました。

その復元された姿から、幕末の戊辰戦争から昭和の動乱期までを生きた西園寺公望の晩年の環境が実感できます。

坐漁荘

古代中国の故事にちなんだ別邸

もともと西園寺公望がこの清水区興津町に坐漁荘を建てようと思ったのは、冬の間、興津にある旅館水口屋で過ごしていたことにはじまります。ご存知の通り静岡県は年中温暖な気候で知られており、冬でも比較的暖かく過ごしやすいことから、老年を過ごすのに最適な場所だと言えるでしょう。

また、坐漁荘の名前の理由は、のんびり座って魚を釣るということでしたが、その名前は古代中国の太公望呂尚の故事「茅に坐して漁した」にちなんでつけたものです

その名前に込めた通り、西園寺公望は座魚荘に移り住んだ時には既に70歳の高齢になっており、老後をゆったりと過ごすつもりであったのでしょう。しかし、大正時代から昭和にかけて軍国主義へ進む日本と、太平洋戦争へと進んでいく動乱の中にあって、西園寺公望の座魚荘での生活は決して太公望の古事にある通りではありませんでした。

実際、幕末から昭和まで生き抜いた元老として、多くの政界の中枢人物たちが頻繁に西園寺公望を訪れ、政治の相談をするという状況になるのです。この政治家の西園寺公望を尋ねる行為を「坐漁荘詣で」と言われるほど頻繁になり、当初西園寺公望が望んだ太公望呂尚の故事のような暮らしはできなくなったのです。

坐漁荘

坐漁荘へのアクセス

坐漁荘は静岡県清水区興津の地にあります。東海道本線の興津駅から車で約5分ほどの場所にあり、歩いて行くには大変なので車でのアクセスがオススメです。この興津には、もう一つ、坐漁荘のすぐ近くに清見寺という歴史的なスポットがあるため清見寺とセットで坐漁荘を回ることをオススメします。

清見寺は江戸時代に朝鮮通信使や琉球使の接待が行われた場所で、国の名勝にも指定されている場所です。坐漁荘はこの清見寺から徒歩で5分ほどの場所にあります。ちなみにカンデオホテルズ静岡島田からは東名高速道路を使って約40分ほどで行くことができます。

坐漁荘の利用案内

所在地: 〒424-0206 静岡市清水区興津清見寺町115

TEL: 054-369-2221

利用料 :無料

営業・利用時間: 平日 10時~17時、土 日 祝日 9時30分~17時30分

定休日: 月、年末年始、月曜祝日の場合は翌平日

座漁荘の周りの周辺観光スポット

座魚荘の周りには多数のおすすめ観光スポットが存在します。冒頭でもご紹介したように清水区はマグロの陸揚げ量が日本一ということもあり、魚市場やマグロが楽しめる寿司横丁などがあります。

またこの座魚荘のすぐ隣には、徳川家康が少年時代を過ごし、江戸時代には朝鮮通信使の旅館ともなった清見寺があります。

清見寺。坐魚荘のすぐそば

座魚荘のすぐ近くにある観光スポットが清見寺です。歩いて数分の場所にあるこの臨済宗のお寺には、日本の歴史上の人物ゆかりの観光スポットでもあるのです。

清見寺は奈良時代に創建されたと言われていますが、戦国時代には駿河の戦国大名今川義元の帰依を受けて発展したと言われています。当時、江戸幕府を開く徳川家康は今川家の人質として、このお寺で過ごし、このお寺の住職でもあった太原雪斎に師事して勉強したともいわれているのです。

太原雪斎は黒衣の宰相といわれた今川家の軍師で、内政に外交、軍事とさまざまな活躍をした人物です。その後、この徳川家康が江戸幕府を開設すると、清見寺は、朝鮮からの外交使節である朝鮮通信使の迎賓館としての役割を果たします。

江戸時代の日本は鎖国といって海外の国との交わりを経っていましたが、朝鮮とオランダのみには開かれていました。特に朝鮮からは朝鮮通信使といった外交使節がはるか朝鮮半島から海を渡り、江戸まで訪れたと言います。

そのさいの迎賓館として利用された施設なのです。この朝鮮通信使の迎賓館として国の史跡に指定されているのは、広島県福山市鞆の浦にある福禅寺と、岡山県瀬戸内市牛窓町にある本蓮寺と、この清水区にある清見寺の3つです。こちらは座魚荘から歩いてすぐなのでぜひおすすめです。

エスパルスドリームプラザ

清水区の観光スポットとしてもう一つおすすめな存在がエスパルスドリームプラザです。エスパルスドリームプラザは、清水エスパルスの運営元の企業が運営するこのエリアの一大商業施設です。

大観覧車からシネマコンプレックスまでそろえるこの施設は、清水港に面したその立地条件から、清水区の食事スポットとしてもおすすめです。その最大のものが1階のフロアに設けられている清水すし横丁です。

清水すし横丁は、ありとあらゆる寿司のお店が入る食の一大スポットで、回転ずしから寿司弁当、寿司職人がカウンターで握ってくれるお店までさまざまなスタイルのお店を楽しめます。

また、清水すし横丁と共に見所なのが、日本で初となる寿司の博物館、清水寿司ミュージアムもあるのが見所です。寿司の成り立ちや歴史など、知られざる寿司の魅力を堪能することができます。

清水魚市場

エスパルスドリームプラザと共に寿司や海の幸が楽しめるスポットが清水魚市場です。清水魚市場では、仲買人たちが厳選した魚介類を購入できる市場のほかに、マグロを中心とした海の幸を味わえるマグロ館など、この地域ならではの食の楽しみが味わえます。清水魚市場もおすすめです。

まとめ

坐漁荘は明治から大正、昭和を代表する政治家である西園寺公望の別邸として、美しい姿を見ることができます。また無料で入ることができるため、清見寺とセットで訪れることをオススメします。