入船山記念館。呉市に残る明治海軍の歴史

入船山記念館とは。明治海軍ゆかりの場所

広島の観光スポットである呉市。広島市から車で40分ほどの場所にある海沿いの町として、海軍ゆかりの観光地として有名です。呉市は人口20万人ほどの中規模な町ですが、明治時代に海軍の根拠地が置かれたことから、現在も海上自衛隊の基地がおかれている町としての特長があります。

そんな明治海軍ゆかりの観光スポットの中でも、最も代表的な存在のものの一つが今回ご紹介する入船山記念館です。入船山記念館は、かつて明治時代に呉鎮守府司令長官官舎が置かれた場所でした。鎮守府とは明治時代の軍港のことで、5カ所に置かれました。

呉は園うちの一つで、大佐時代の東郷平八郎が呉鎮守府第2代参謀長として赴任していました。入船山記念館はその鎮守府の司令長官の官舎兼住宅であった建物で、現在は国の重要文化財に登録されています。ちなみに東郷平八郎は日露戦争の際に、日本の連合艦隊を率いてロシアの旅順艦隊とバルチック艦隊を打ち破った軍人です。

入船山記念館はそんな明治時代を代表する軍人である東郷平八郎ゆかりの観光スポットでもあるのです。

入船山記念館

総理大臣経験者も務めた鎮守府司令長官の官舎

また、歴代司令長官は、その名前だけでも日露戦争や明治時代を代表する著名人が連なっています。例えば二代目司令長官の中牟田倉之助は、佐賀藩士として、海軍を学んだ人物です。

また、九代目の司令長官である加藤友三郎は日露戦争で参謀長を務めるだけではなく、のちに総理大臣にもなった人物です。更に、15代司令長官は、内閣総理大臣として終戦に導いた鈴木貫太郎です。

こうした日本の歴史上の人物たちが過ごした官舎兼住居跡を見ることができる貴重なスポットなのです。

入船山記念館の見所

入船山記念館は、1967年に開館した記念館ですが、海軍の司令官の官舎兼住宅であったことからその敷地は広く緑あふれる敷地面積約1.2万m2を誇っています。

その敷地内には、いくつかの建物が設けられており、入船山記念館の最大の見所である旧呉鎮守府司令長官官舎(本館)を中心に、郷土館や歴史民俗資料館、更には呉市立美術館まで多数の見所が登場します。

入船山記念館

美しい風景が見所です。

旧呉鎮守府司令長官官舎

入船山記念館の最大の見所が旧呉鎮守府司令長官官舎です。呉鎮守府の歴代司令長官は海軍中将や海軍大将が務めました。呉に鎮守府が設けられたのは1886年で、終戦の1945年までの間に34名の司令長官が赴任してきました。

その中には冒頭でご紹介したように内閣な総理大臣を務めた加藤友三郎や鈴木貫太郎、太平洋戦争最後の第一艦隊司令長官であり猛将として知られていた南雲忠一など、日露戦争から太平洋戦争まで活躍した海軍軍人たちが存在します。

そんな司令長官たちが官舎兼、住宅として使っていたのが旧呉鎮守府司令長官官舎です。この建物は建築面積527㎡を誇る大きな洋館で、国の重要文化財にも登録されています。

入船山記念館

外からの見た目な白い壁で作られたイギリス風の木造建築物で、ハーフティンバー様式といわれる建物です。屋根には天然の粘板岩が使用され、玄関にはステンドガラスが使用されています。明治時代初期に建てられた洋風建築ではよく見られる形式で、軽井沢に残る旧三笠ホテルなどもこの様式です。

一度芸予地震で倒壊しましたが、1905年に再度建築され、築100年たった2005年に国の重要文化財に登録されました。

入船山記念館

レストランも完備しています。

この旧呉鎮守府司令長官官舎は、内部に入ると外から見る印象とは違い、非常に広大な印象を受けます。ここは司令長官だけではなくその家族が住む住宅だけではなく、執務や応接室、さらには迎賓館としての役割をはたしており、住居が和風である一方、執務室と応接室、食堂などは欧風で、まるで高級ホテルのような印象を受けます。

入船山記念館

公邸として執務を行っていました

旧東郷家離れ

入船山記念館に入ると、美しい日本庭園のような印象を受けますがその中にある建物が旧東郷家離れです。これは日露戦争の連合艦隊司令長官であった東郷平八郎が住んでいた離れを移築したものです。東郷平八郎は、呉鎮守府に参謀長として赴任していた時期がありました。

そのころ呉に住んでいた自宅の離れをここに移したものになります。ちなみに自宅は明治時代に火事で焼失してしまっています。東郷平八郎といえば、日露戦争でロシアの旅順艦隊とバルチック艦隊を破った名将として知られています。

薩藩出身の人物で、明治初期に鉄道技師になろうとして郷党の先輩である西郷隆盛に相談したところ、海軍をやれと言われて海軍の道に入った人物です。そんな東郷平八郎ですが、実は日露戦争で司令長官に任命されるまでは、海軍内でも地味な存在としてあまり知られていませんでした。

そんな東郷平八郎ゆかりの住宅の離れをこの場所で見ることができます。平屋建て瓦葺の日本建築で、国の登録有形文化財に登録されています。

入船山記念館

かつて東郷平八郎が住んだ離れです。

旧海軍工廠塔時計

この旧東郷家離れを見て進むと登場するのが、旧海軍工廠塔時計です。この時計は、高さ約10m×幅2.4m四方、文字盤直径1.5mの大きな時計で、呉海軍工廠造機部の屋上に設けられていた時計です。

ちなみに海軍工廠とは、今でいう造船所のことで、軍艦の建設や保守管理などを行っていた場所です。この時計はその造船所のシンボルともいえる時計で、この入船山記念館に移されました。

ちなみに、呉海軍工廠は、実は当時は世界の二大兵器工場ともいわれており、有名な戦艦大和をはじめ数々の軍艦を建設した造船所でもあったのです。戦後は、呉造船所、石川島播磨重工業呉工場などとして使用され、現在はジャパン マリンユナイテッド呉工場となっています。

ちなみに今は自衛隊の軍艦は作っていませんが、修理は行っているようです。この時計はいわば海軍ゆかりの時計といえるでしょう。実はこの時計、国産初の電動親子式衝動時計といわれており毎日9時・12時・15時・17時の4回に音楽が流れます。呉市の有形文化財です。

入船山記念館

海軍工廠の時計塔もみれます。

旧高烏砲台火薬庫

時計塔を超えると有料エリアとなります。そこで初めて登場するのが旧高島砲台火薬庫です。呉市には海軍の司令部があっただけではなく陸軍の要塞も存在していました。それが呉要塞、広島湾要塞といわれるもので、広島湾と呉軍港を防衛するために設けられていたのです。

この要塞は音戸瀬戸などまでも含む要塞で、海上からの攻撃などを防ぐためを目的としています。しかし、その後1926年に豊予要塞が築かれるにおよび、廃止されています。

この火薬庫はこの要塞の一部であった高島砲台におかれていたものでここに移築されたのです。この火薬庫は、国の登録有形文化財に登録されており、貴重な明治期の建築様式が目の当たりにできます。

特にすべてが石造りで作られている火薬庫というものは非常に珍しく、旧高島砲台火薬庫は、どのアーチ状の出入り口なども含め貴重な建築物として評価されています。

入船山記念館

貯蔵庫もみれます。

入船山記念館の利用案内

所在地:〒737-0028 呉市幸町4番6号
TEL:0823-21-1037
FAX:0823-26-6270
開館時間:9時~17時(入館は16時30分)
休館日:毎週火曜日、年末年始
観覧料:一般250円、高校生150円、小中学生100円

呉市立美術館

入船山記念館の一部ではありませんが、同じ敷地に入り口があるので、おすすめのスポットが呉市立美術館です。呉市立美術館は、本館と別館に分かれた呉市を代表する美術館で、入船山記念館の洋風建築や内部の雰囲気に合わせて、同じく赤煉瓦の洋風建築で作られています。

また呉市立美術館がある通りは美術館通りとして整備されており、200メートルほどの美術館通りは、15体の彫刻が設けられており、美しい風景を楽しむことができます。この美術館通りは日本の道100選にも選ばれるほど。呉市立美術館では、ルノワールの「麦わら帽子の少女」などの絵画から地元の美術家たちの作品が多数展示してあります。

入船山記念館

美術館と美術館通りもおすすめ

呉市立美術館の利用案内

所在地:〒737-0028 呉市幸町入船山公園内
TEL:0823-25-2007
FAX:0823-24-9813
開館時間:10時~17時(入館や16時30分)
定休日:毎週火曜日、年末年始
観覧料:一般300円、高校生180円、小中学生120円

入船山公園

ここまでご紹介してきた入船山記念館と呉市立美術館ですが、この二つは入船山公園といわれる敷地内に設けられています。入船山公園は、ここまでご紹介した二つのエリアを文化ゾーンといい、その南側の部分を広場として、広場ゾーンとなっています。こちらの広場ゾーンの方は基本的にはふつうの公園と広場として過ごすことができます。

呉市のおすすめ観光スポット

入船山記念館は呉市の海軍の歴史や文化がわかる観光スポットですが、呉市にはこれ以外にも海軍ゆかりの観光スポットが登場します。ここでは入船山記念館とセットで見たい呉市のおすすめ観光スポットをご紹介しましょう。

海上自衛隊呉資料館

最初にご紹介するのが海上自衛隊呉資料館です。呉はかつて海軍の根拠地だったように、今でも海上自衛隊の基地がある場所です。

海上自衛隊呉資料館は、そんな自衛隊が運営する無料で利用できる資料館としておすすめです。名前は資料館ですが、ここでは他では決して見ることが出来ない、圧巻の展示を体験できます。

それが本物潜水艦の内部に入ることができる展示です。海上自衛隊呉資料館の外には、実際に1986年から2004年まで使用されていた潜水艦あきしおが展示しており、外から見るだけではなく中にも入ることができるのです。呉観光の最大の見所スポットの一つです。

大和ミュージアム

海上自衛隊呉資料館の目の前にあるもう一つの観光スポットが大和ミュージアムです。先ほど呉海軍工廠の部分でもご紹介した通り、呉市は海軍の軍艦を建造する造船所があり、当時は世界最高峰の造船所ともいわれていました。その造船技術の結集として数々の軍艦が作り出されましたが、その最大のものが戦艦大和です。

こうしたことから、設けられた大和ミュージアムでは、巨大な戦艦大和の模型展示をはじめ、呉で作られた数々の戦艦や巡洋艦、空母、潜水艦などの模型が展示してあります。こちらもセットで訪れることをおススメします。

まとめ

入船山記念館は海軍というかなりハードな分野の司令部とは思えない、文化的なたたずまいの観光スポットです。司令官の官舎兼住宅跡地は、明治時代の洋風建築を象徴する美しい建物として、また内部は迎賓館の役目も果たしていたことから、高級ホテルのようなイメージとして楽しめます。

また入船山公園にあるそのほかの建物や美術館など、このあたり一帯は落ち着いた雰囲気で観光が味わえます。